【本屋大賞】蜜蜂と遠雷を読んでみた。
どうもどうも、書評系ブロガーminです。
今回はですね、2年ぐらい前に本屋大賞を受賞した恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」についてレビューしていきます。
この作品を読んだあとの感想は「恩田さん、やっぱ天才やな」の一言。
正直にいうと、この蜜蜂と遠雷がめちゃくちゃ良い作品という訳ではないんですよね。
この作品は恩田さんの他の作品と比べてみても大衆向けに書いあって、優しくて易しい文章。だから長編やけどスラスラ読めてしまう。ある種のエンターテイメントやなという印象を受けました。読んでいて不快なところが一切ない。
で、恩田さんの何が天才かと言いますと。
恩田さんの他の作品を読んではる方はお分かりいただけると思うんですけど、恩田さんてね明確に「恩田さんぽさ」っていうのがない人なんですよ。(ないっていうの語弊があるか・・・。)
なんというか、作品によって作風が違いすぎて恩田さんて名前の別の人が書いてるんちゃうかってなるぐらい。でも作品のどこかに恩田さんの体温みたいなものを感じて「あ、これも恩田作品やな」ってやっと腑に落ちる。
それぐらいすごい人なんです。掴みどころがなく、のらりくらり。けどきちんと作家として成功してはる。いやはやすごすぎ。
「恩田さんといえばホラーだよね」、「恩田さんといえばミステリーだよね」ってカテゴライズできないのが恩田さんだと私は思っています。言うなれば『ジャンル:恩田陸』みたいな。
作風の引き出しが多いから色んな人の心を揺さぶる作品を作りはる。だから「この作品はほんまにめっちゃ好きだけど、これはあまり好きじゃない」という振り幅がでかいんですよね。ま、これはあくまで私はそう感じるって話なんですけど。
でもこの蜜蜂と遠雷は一転して大衆向け。「このジャンルが好きな人に」っていうより、みんなに向けて書かれている。
「みんな」って結構難しいですよね。文学だけでなく「人から評価されてなんぼ」っていう業界はどうしても大衆迎合しがち。数字を狙うために戦略的であるのは悪くはないのだが「作り手はどうなんやろう、つまんなくないんやろか」と、1コンテンツの受け手がお節介な心配をしてしまう。
蜜蜂と遠雷を数ページ読んだときに「あれ恩田さん、大衆向けの作品書きはったんかな」ってちょっと心配したんです。別にディスってるってわけじゃないんですけど、それなりに売れる文章や売れる本ってやはり傾向がある。
”読者を傷つけることなく明確な答えをわかりやすく示してくれる”
そんな本はやはり売れているなと思います。(当社比)
「恩田さんもそういう流れに流されたのかな、ちょっと残念」と小生意気なこと思ったんですが、そんな考えを頭から消しさるくらいに蜜蜂と遠雷という物語に引き込まれました。
「私こんな作品も書けますけど何か?」みたいな。それくらい蜜蜂と遠雷は出来上がってる。忖度せずに表現すると、仮に大衆向きに書かれた作品に寄せにいってたのであったとしても、その寄せ具合?っていうのかな、完成度がエグいんです。(←うまく言葉にできませんでした。伝わってるかなー。とにかく読んで!その方が早い!)
そりゃ本屋大賞ぐらいとるわな、納得納得って感じ。
でも私には蜜蜂と遠雷はライトすぎる。さらさらして手からこぼれ落ちていく感じ。
(逆に考えると長編をここまで軽く無重力な感じでかけるのってすごいことや。やっぱ恩田さんは天才なんや・・・。)
個人的にはもうちょっと重たくてねっとりとしてて。心がざわざわして落ち着かなくて、頭から離れないような感じの作品が好み。
文庫本やったら上下巻にわたるんですがさっくりと読めちゃうと思いますよ。内容が気になる方は読んでみてくださいね。意見交換しましょ。
他の恩田作品を読んでなくても、問題なく蜜蜂と遠雷は楽しめます。
しかし。
蜜蜂と遠雷をより楽しみたい方は、恩田陸さんの他の作品を読むことをお勧めします。
最後に私お勧めの恩田さん作品をご紹介して終わります。
1. ネバーランド
男子校生の友情やらなんともいえない儚くて危うい感じにノックアウトされること間違いなし。
私は男の子になって男子校に通いたいな・・・と思ってしまいました。
2. 黄昏のユリの骨
色んな意味でやばい女たちがたくさん出てきます。人間が一番怖いんやなと思わされる一作。くわばらくわばら。
でも私はこの作品の主人公のファンです。超好き。
3. チョコレートコスモス
これは蜜蜂と遠雷が好きな人は多分好きやと思う一作。恩田さんてやはり”女性”とか”何かしらの天才”を書くのがうまい人やなぁとなります。