【穂村弘】蚊がいるを読んだ。
当たり前だが何度も読む本は内容を覚えるし、「面白い」って自分の琴線に触れる本なんかも一度読むと覚えてしまう。
この本はどちらかというと内容を覚えられなかった本ではあるけど、グッとくるというかあまりに自然で自分によく馴染んだなと思う。
ここに収録されている『男たち』という文章がなんか良かった。うん、よかったとはちと違うかな、私がなんとなく思っていたことを例もきちんと示して言語化してくれたなと思う。
この文章は男性である穂村氏が男性目線で男性を語っているのだが、男性と女性の目線の違いについて非常に的確に書いている。
というのも、女性は周りの目をきちんと気にしていて客観視する視点を当たり前のようい持っているが、男性はちょっとそこが弱いよねってことを別に男性を責めることも女性におもねることもなく書いてあって非常にフラットなとこが良い。
道に痰を吐く女はひとりもいないのに、男は沢山いる。これなども客体としての意識の差が端的に表れた結果だろう。女性からすると、何故人前であんなことができるのか信じられないと感じるのではないだろうか。だが、理由はある。「痰を吐いた俺」の姿が男にはよく見えないのだ。
ファミレスとかで喚く親父もこれにあたるんだろうなと思った。なるほど、見えないのか。そら道端で痰も吐くし人前で怒鳴り散らせるよなってなる。
しかしあくまでそれを許せるかどうかはまた別の話。
そんなこんなで穂村氏がドクターマーチンを履いた自身の足をそっとテーブルの下に隠したり、疲れすぎてぎりぎりの状態になり心の言葉が溢れた人を慈しんだりしている本だ。
最後に収録されている又吉氏とのやり取りもかなり面白い。