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メラメラ女子のブログ

【読書感想】すべて真夜中の恋人たちを読んで。

 

自称読書家なのに久々に本を1冊読了したという事実は見ないふりとする。

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すべて真夜中の恋人たち

著・川上未映子

 

タイトル通り、恋愛物でした。

34歳の冬子さんと58歳の三束さんの恋、というには少し苦しい物語でしたね。

 

冬子さんは校閲の仕事をしていて、その職業柄物語を決して読みこみ、感情移入してはいけない。間違いを見つけられなくなってしまうから。

そのせいか、冬子さんは自分の人生にもどこか感情移入できていないような自分の話がなかなかできない、そんな人。

 

三束さんは高校教師で物理を教えている、どこにでもいそうなおじちゃん。

 

恋愛のキラキラした感じとか前向きな感じというのが前面に押し出されているのではなく、2人のつかずの距離が厳かな空気で、2人の緊張感だけがひしひしと伝わってくる。

 

今時の若者が行う生き急いだ恋愛とは全く違うスピード感で、なんだか読んでいて安心する。

クルクルと進展する関係性や人を飽きさせない構造とスピード感がエンタメ的に良しとされているし、人に熟考する隙を与えずインパクト重視の物語が好まれるなという中なんとも考えさせられるという点が印象的。

そして川上未映子さんらしい情報量というか言葉の豊富さが読み手をどこまでも引っ張っていく。一人ぼっちにしない作家さんなんですよね、川上さんは。

 

濃厚です。

でも甘々していないから胃もたれはせず、ほとりという重量感で一人で真夜中に散歩したくなるような本です。