十角館の殺人を読んだ。
かれこれ何日ぶりになるかわからない読書感想文だ。
しかし面白かった。読みやすいし、とっつきやすいし引き込まれやすい。ミステリー初心者も安心安全の作りになっている点もヒットの要因なんだろうなと思う。とにかく、あらすじはいつもながらあっさりと省きますよ。気になる方は是非読んでほしいので。
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本作の登場人物の中で特に感情移入していた人物が「エラリイ」という人だった。今思うとこの人に注目していたのは、作中で探偵的な役割だったからなんだろう。これ以上言うとネタバレになるので慎重に。この本のミソは映像化できない点、所謂叙述トリックが輝く作品だ。注意して、ささやかな「なぜ?」という疑問を馬鹿にすることなく精査すれば、色んな可能性を頭の中で展開できるから尚のこと楽しくなるのだろう。
当の私はというと、先が気になりすぎて読み進めたという「貪欲型」だから、偉そうに考察することを勧めるのは甚だお門違いなのだが。でもちゃんと犯人は誰かっていうのを探してはいた。だが見事に欺かれ、当てが外れた。そういう鮮やかな作品なのである。
また、解説というか種明かしがきちんとしているのも人気の秘密なんじゃないだろうか。謎のままにしておいた方が良い謎もあるが、世の人はたいていマジックの種を知りたがるもの。そういう世の心理にもちゃんと寄り添っているから初心者向けであると私は思う。
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ミステリーはネタばれすることなくその魅力を伝えるのが大変難しいから、読書感想文力が嫌でも鍛えられそう。またトリック以外のところに焦点を当てて感想を書くのも面白いかもしれない。「そこ?!」ていうみんながびっくりする角度からミステリーを読むのってなんだかきっと、楽しそう。読書の幅が広がりそうなポテンシャルを持っているのもミステリージャンルの面白さなのかもしれない。
読書欲がふつふつ湧いているので、読むぞ読むぞ。